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2021 AUTUMN

若いイギリス人女性の見た北朝鮮

外交官の夫について2年間北朝鮮の平壌で暮らしたイギリス人女性。社会主義体制の裏面で、実際に見聞きし感じた人々の日常の姿と、彼らと交わした心温かい交感は、帰国から2年が過ぎた今も、依然として彼女の記憶の中に息づいている。

30代のイギリス人女性が経験した北朝鮮は、考えていたよりも多感で親切な所だった。わずか2年ほどの平壌生活だったが、彼女の価値観を大きく変えてしまうには十分な時間だった。

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外交官の夫と共に平壌で2年間暮らした後、イギリスに帰国したリンジー・ミラーさんは、自分が想像していたよりもはるかに複雑で摩訶不思議な国、北朝鮮の姿を多くの人に伝えたいとこの本を出した。彼女はもう自由を当然のものとは思わなくなったという。
© Lindsey Miller

作曲家であり音楽監督のリンジーミラー(Lindsey Miller、33)さんは、2017年から2019年まで外交官の夫と共に北朝鮮に暮らし、そこで出会った人々の写真とエピソードをまとめて5月に本にして出版した。200頁ほどのこの本のタイトルは刺激的だ。『北朝鮮、唯一無二の地』(North Korea: Like Nowhere Else)。

北朝鮮に到着するまで彼女は、その地に暮らす人々をまるで冷たいロボットのようだろうと想像していた。特に外国人にはとてつもなく冷淡で、敵対的であろうと案じていた。しかし、平壌で2年暮らして帰国した今、そのような考えは偏見だったとミラーさんは言う。彼女が出会った北朝鮮の人々は、友好的で温かな人々だった。

「外国人は北朝鮮にたいして、軍事パレードや集団体操、ミサイルというような先入観を持って眺めます。それらを通じて北朝鮮の人々に対しても非常に厳格で、堅苦しいと考えるのです。しかし、彼らも私たちと同じ人間です。おじいさん、おばあさんは孫を可愛がり、家族を愛する平凡な人々なんです」

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平壌周辺はもちろん、田舎道でも村々を行きかう軍用トラックに大勢の軍人たちが乗っている光景をよく見かけた。ミラーさんが見た軍人たちは厳格で恐ろしい存在ではなく、ただ微笑を浮かべ、挨拶も交わす普通の若者たちだった。
ⓒ Lindsey Miller

彼らは軍人である前に、平凡な20代初めの若者たちだった。彼女はこの写真を撮った瞬間を鮮明に記憶している。軍人たちと挨拶を交わし、彼らの中の一人が彼女に投げキッスをしたのだ。

確かな変化
ミラーさんは北朝鮮社会の画一化された雰囲気の中に、小さな変化を見つけた。ある日の午後、取り締まりと制裁を象徴する労働新聞社(朝鮮労働党)の前を、手をつなぎ歩いている若いカップルを見たのだ。彼女はその光景を写真に撮って本に掲載した。それだけではなく、以前には想像さえできなかった若者たちの姿をよく見かけた。幼い生徒たちは、アメリカのディズニーのキャラクターが描かれたカバンを背負って歩いていた。

「アメリカ文化の象徴であるディズニーのカバンを北朝鮮で見かけるなんて想像できますか。北朝鮮の国営テレビでもディズニーのアニメ映画を見ました。複雑な気持ちになりました。私は北朝鮮の人々が、それらのものがどこから来たのか知っているのかが、気になりました」。

ミラーさんは自分の撮影した数千枚の写真の中でも、トラックに乗ってどこかに行こうとしている北朝鮮の軍人たちの写真が一番のお気に入りだ。この写真には彼女が北朝鮮とそこで暮らす人々をどんな視線で見ているかがよく表れている。多くの人々は北朝鮮の軍人だといえば、キム・ジョンウン政権を連想するだろうが、ミラーさんが直接見て感じた彼らは、軍人である前に平凡な20代初めの若者だった。彼女はこの写真を撮った瞬間を鮮明に記憶している。軍人たちと挨拶を交わし、その中の一人がミラーさんに投げキッスをした。周りの人々は屈託なく笑いだし、彼女も同じように投げキッスを彼に送った。

「私たちは北朝鮮にこのような日常があるということを想像もしません。軍服に集中しすぎるあまり彼ら自身を見ることを忘れているのです。私は北朝鮮に暮らしながら、彼らが誰なのか、どこから来て、家族と彼らの人生はどのようなものかを考えるようになりました」

住民たちとの接触
外国人居住者もかなり自由に平壌市内を歩き回ることができた。ショッピングをしたり、外食をしたり、道で出会った人々と比較的すんなりと話をすることもできた。驚いたことに多くの北朝鮮の人々は、基本的な英会話ができた。中には英語を話したくて自ら近づいてきた人もいた。その一方で観光客とは違う、外国人居住者が守らなくてはならない規則と制約もあった。バスやタクシーのような公共交通機関を利用することはできず、北朝鮮住民の家を訪問することもできなかった。

北朝鮮の人々といつでも自由に話ができるわけではなかった。実際に監視システムをずいぶんたくさん経験した。道で出会って自由に話をしていた人々が一瞬表情を変えて、突然その場を離れることがあった。周囲を見回すと必ずスーツを着た男性が立っていたものだ。平壌市内の商店もまた異邦人に対して歓迎してくれるわけではなかった。時々店の中に何人も客がいるのに、ミラーさんが入っていくと「営業は終了した」と断られたという。

ミラーさんが最も興味を抱いた対象は、平壌の若い女性たちだった。特に同年代の女性たちに関心があった。恋愛と結婚、キャリアについて彼女たちの考えが変わりつつあることに驚いた。

「私が会った平壌の若い女性たちは、結婚と出産よりも仕事とキャリアをより重視していました。結婚をしている私に子供がいないことにも、非常に関心を寄せていました。長時間働くのがとても大変だと話す女性もいました。結婚するのがイヤだと言う女学生もいました。もちろん平壌のエリート階層に属する女性たちの話です。私が北朝鮮で出会った人々の大部分が北朝鮮社会の上位権力階層であり、外部の人々と接触する機会も多く、経験も豊富でした」。

彼女は外交団地のある平壌市東部のムンス洞で暮らした。各国の大使館、国際機関、国際救護団体のある地域だ。規模は大きくなく、ときどき電力供給が円滑にいかなかったが、暮らしていくのにさほど大きな問題はなかった。衛星テレビを見ることができ、インターネットの接続も可能だったが、速度は非常に遅かった。外交団地の中には外国人学校もあったが、レベルは低く、大部分の外交官家族は子供たちをホームスクーリングしていた。

ミラーさんは北朝鮮に出発する前に、北朝鮮で最も多く使用されている外貨のドル、ユーロ、人民元などを準備してくるようにというアドバイスを受けた。ところが意外にも、しわくちゃのドル紙幣は受け取ってもらえなかった。到着直後に現地人のドライバーと一緒に空港駐車場の料金精算所で1ドルを渡したところ、しわくちゃで汚いと受け取ってもらえなかった。平壌で品物を買った後、お釣りの代わりにガムやジュースのようなものをもらうのはよくあることだ。デパートではおつりを北朝鮮貨幣のウォンで渡されることもあった。外国人たちはATMを使うことができなかった。そのため手持ちの外貨の現金が底をつくと、外国に行って来るという知人に調達してもらった。多くの外国人たちは、北朝鮮と中国との国境都市、丹東のATMで現金を引き出していた。

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平壌の地下鉄駅に巨大な金正日総書記の肖像画が掲げられている。その下を通り過ぎることは、人々にとっては見慣れた日常の一コマにすぎないように見えた。
ⓒ Lindsey Miller

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2018年秋のある日の午後、平壌市内の小さなアパートの情景だ。ミラーさんは北朝鮮の既存の世代が見て経験したことが何なのか、彼らが信じる北朝鮮の未来とはどんなものなのか、常に気になっていた。
ⓒ Lindsey Miller

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2018年の閲兵式で、金正恩総書記の前を過ぎて平壌の通りを行進していく女性軍人たちが、カメラを見て手を振っている。群衆は彼らに風船と花を渡して歓呼している。ミラーさんはこの写真を本の表紙に使用することに、さほど迷いはなかったと言う。
ⓒ Lindsey Miller

短かったが強烈な記憶
2018年の米朝首脳会談は、ミラーさんに最もエキサイティングで強烈な記憶を残した。彼女はすでに外信ニュースを通じてそのニュースに接していたが、北朝鮮の放送は会談のニュースを一日遅れで発表した。知り合いの北朝鮮の人々がミラーさんのところに来て、何が起きているのか聞きたがり、説明してくれと言った。平壌市内には「私たちは一つ」というスローガンとともにキム・ジョンウン総書記とトランプ大統領が握手をしている場面を写した大型の写真がかけられた。

北朝鮮の人々が韓国の歌を聞いたり、テレビ番組を見ているというウワサはずいぶん耳にしたが、ミラーさん自身が直接見たり聞いたりしたことはなかった。北朝鮮で韓国のコンテンツに接するのは最高刑に処される犯罪行為だ。北朝鮮の人々はミラーさんに、ソウルに行ったことがあるか、ソウルはどんなところかなどとたずねたりした。ある北朝鮮住民は、彼女がバリの海岸で写した写真を見せると、本当に美しいと長い間見つめていた。彼らはイギリス文化に対してもいろいろと訊いてきた。しかし、性平等や同性婚のような問題に関しては、ほとんど理解不可能に見えた。

ミラーさんの初期の北朝鮮の写真には建物がたくさん登場する。彼女の目には建築の外見やデザインが異色に映ったからだ。やがてすぐに人々に焦点が移り、自分が見ている北朝鮮の人々の日常を創意的な視覚でおさめた。時にはどうしても写真に撮れない瞬間があり、ミラーさんは彼らを尊重するためにシャッターを押さなかった。

最初は本を出す計画はなかった。しかし、イギリスに戻って写真を整理しながら、北朝鮮での思い出が浮かぶことで、自分の経験と感情を振り返りながらこれを多くの人々と共有したいと思うようになった。本は演出のない自然体の写真200枚と16編のエピソードで綴られている。北朝鮮の体制や政治状況よりは、人々に焦点を合わせた。

『北朝鮮、唯一無二の地』(North Korea: Like Nowhere Else)という題目には多くの意味合いが含まれている。

「北朝鮮がどんなところなのかという質問に、簡単に答えるのは本当に難しいです。私の知っているすべての場所、私が経験し見たすべての場所の中に北朝鮮と同じところはありませんね。外国人にもできることと、できないことが明確に区分されていました。私の本の題目をこのようにつけた理由です」。

ミラーさんは北朝鮮からイギリスに戻った後、韓国を初めて訪問した。すでに北朝鮮で暮らしてみた経験のせいか、より一層胸に迫るものがあり、非武装地帯(DMZ)では特に気持ちが揺らいだという。

「国境は閉ざされていますが、北朝鮮に対する心まで閉ざしてはなりません。北朝鮮にも人々が暮らしているからです」。インタビューの最後に彼女が口にした言葉だ。

キム・ハクスン金学淳、 ジャーナリスト、高麗大学校メディア学部招聘教授

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